ご挨拶

   

  北海道高等学校教育経営研究会(以下「高経研」)は、1990年に設立された有志の研究会であり、以来23年間にわたり、身近な教育改革の実践を目指し精力的に活動を続けてきています。

 高経研では、各学校において、教職員一人一人が、生徒の人間としての調和のとれた成長・発達を図るために、日常の教育実践を謙虚に考え、学び、創造することを研究活動の基本理念としており、各会員はこの理念に基づき身近な教育改革の実践を積み重ねています。身近な教育改革とは、学校が、現行の教育法制度の下で、学校個々に与えられた教育条件を最大限に生かす教育経営の努力を行って、生徒に質の高い教育活動を保証しようとする学校独自の教育改革であり、教職員が日常の些細な身近な出来事に関心を払い、「だれでも」、「どこからでも」、また、「いつでも」取り組むことができる、自由にして、弾力的な教育実践のことです。

 さて、教育とは本来自由なもので、師・弟それぞれの間における信頼と愛情をもって成り立つ行いであるはずです。しかるに、最近の我が国の教育を取り巻く情勢には、そうしたものに逆行する危うさを色濃く感じます。

 昨年末の政権交代以来、政府は教育再生実行会議を設置し、小学校における英語の必修化をはじめ、道徳の教科化や大学入試センター試験の廃止見直しなど、政治主導の施策を次々と推し進めようとしています。前政権が打ち出した高校教育無償化の理念もあっさりと否定され、教育の流れが大きく変化しようとしています。

 道教委においても、校長会等からの意見聴取もせずに議会答弁を行い、その中で新たな施策が決定されているという状況があります。学校ごとに異なる実情を踏まえることなく、通知一本で全校一律に施策を推し進めようとする姿には、ともすると全体主義的、国粋主義的な影が見え隠れし、教育に携わる者として見逃しておくことのできない状況にあると感じています。

 また、本会では2011(平成23)年の3.11東日本大震災を契機としてシティズンシップ教育の必要性を強調していますが、これからの我が国の在り方を正しく捉え、社会の形成者として政治・経済活動に主体的に参加する市民を育てていくことが、教育に課せられた使命であると考えています。これまでも繰り返し申し上げてきましたが、教育は国家百年の大計であり、ポスト3.11の社会をつくりあげていく礎は教育にあります。私たちは教育の可能性と力を信じ、教育のあるべき姿を求めています。

  本会では、現在「北海道を元気にする高校教育」を研究主題に掲げて活動しており、特に今年度については、「ポスト3.11の教育を考える〜これからの高校教育の在り方を探る〜」を研究課題に、シティズンシップ教育をキーワードにポスト3.11の教育を展望していきたいと考えています。

 

 

                    北海道高等学校教育経営研究会

                       会長  辻   敏 裕